「ホースの角度をちょっと変えると、縁側からも小さな虹を見ることができた。
太陽の光の七つの色。
それはいつもは見えないけれど、たった一筋の水の流れによってその姿を現す。
光はもともとあったのに、その色は隠れていたのだ。
たぶんこの世界には隠れているもの、見えないものがいっぱいあるんだろう、
そうしてそれは、ほんのちょっとしたことで、姿を現してくれるものもあれば、
偉人伝に出てくる科学者や冒険家たちのたどったような、長くてつらい道のりの
果てに、ようやく出会うことのできるものもあるにちがいない。
ぼくが見つけるのを待っているなにかが、今もどこかにひっそりと隠れているの
だろうか」



湯本香樹実『夏の庭』より
少年三人と老人の交流のお話。