キャンプファイヤーの炎は、すごくきれいだった。
いつまでも、燃やすものがなくなってしまうまで、ずっとその炎が続けば
いいのにと思った。
学校では、猿が火を使うようになって人間に進化したって教えてもらったけど、
ぼくは、火をきれいだって思った猿が人間になったんじゃないかなって思って
る。人間になりたかったからじゃなくて、火をきれいだなって思ったときから、
とにかく人間になってしまうんだ、きっと。
だって、きれいなものを見たり、面白いことを聞いたら、だれだってほかの人に
伝えてあげたくなるだろ?だから、言葉をしゃべらなくちゃいけなくなってしま
う。火がきれいだよってだれかに教えてやるために、言葉が必要になる。
文字が必要になる。だから火をきれいだって思った猿は、やっぱり人間になる
より仕方がなかったんだよな」


     伊藤たかみ『ミカ!』より